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2022年6月 瓦土塀講習会その五“屋根仕上げ”

三年前の2020年9月から始まった『関東の粘土による瓦土塀』講習会は、この6月に瓦屋根を仕上げた事でようやく全工程が完了致しました。その最終工程である〝屋根仕上げ〟講習も、期間そのものは延長含め七日間だったもののコロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で一年越しの完了でした。

 

まず小屋組を作ります。原寸大の模型で施工イメージを共有し、躯体の柱に棟木・桁・垂木を取り付け、今回の土塀には庇(ひさし)を設けるのでその下地としてシュロ縄を巻きつけた丸竹を取り付けていきます。

 

野地板を渡してルーフィングを敷き、瓦を留める為の桟を打ち付けて下地が完成。とかく雨に降られる講習会でしたが今回もやはり途中で雨、、もはや皆慣れたもので、手早く合羽を着込んでテキパキと工程を進めていきます。

下地が出来たので瓦を留めていきます。土塀は内部に水が差し込む事が致命傷に繋がる為、この工程をいかにしっかり収めるかで耐久性が大きく変わってきます。念入りに段取りを確認し、手分けして施工開始。桟瓦・熨斗瓦・素丸瓦と順番に隙間無く重ねていき、重なりにはしっかりと粘土を詰め込んでいきます。瓦の構造上左から順番にしか葺けないので一段・二段と時間差でテンポ良く。

屋根がある程度進んだら庇を塗ります。泥の喰い付きを良くする為に下地に水を打ち、垂直〜逆勾配になっているので剥離しない様少しずつ塗り重ねていき、強度を高める為に塗り重ねの途中で下げ縄を仕込みます。庇が無い土塀もありますが、庇をしつらえる事で屋根をより大きく張り出す事が出来る為、耐久性が大きく変わります。見た目の雰囲気も重厚になり存在感が増してきます。

屋根を葺き終えたのでようやく雨よけの単管パイプとブルーシートを外せる様になりました。この瓦土塀、粘土積み上げの工程に入ってからの一年近くずーっとブルーシートに覆われていたので、道行く人々は何事かと思っておられた事でしょう。我々にとっても遮蔽物の無いありのままの姿を見るのは初めてです。実に圧巻。誰しもがしばし手を止めて、これまでの道程を噛み締める様に見入っていました。

最終日は天候にも恵まれ、青空の下で清掃と、最後の仕上げに撥水剤を塗布します。伝統工法の瓦土塀と現代の化学薬品。相反する要素の様でいて、古来より構造物を風雨から守る事に努め、研究を重ねてきた建築の歴史の最先端にある素材を用いる事は、決して突飛な事ではありません。お施主様のために作るものをいかに長持ちさせるか、、モノづくりの気構えは昔の職人と変わることなく。

これを以ちまして、『関東の粘土による瓦土塀』講習会は全工程が終了しました。今回は最終工程の屋根仕上げについてご紹介させて頂きましたが、いずれ全5工程の総集編を掲載致します。

ご覧いただいている皆様、どうぞ楽しみにお待ち下さい。

 

ライター : 神奈川県支部員 小谷大輔

 

 

 

 

 

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