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瓦土塀講習会(写真:相澤武)日本庭園協会神奈川県支部

瓦土塀講習会を振り返って<支部会員の言葉>

ありがたいことに、「過去の講習会をひとつ振り返ってみないか」というお話をいただきました。これまで私は日本庭園協会、そして日本庭園協会 神奈川県支部に入会したことで、さまざまな講習会に参加してきました。一流の講師の方のお話を聞き、その技術を拝見させていただくなど、とても刺激を受けている日々です。

その中で「ひとつ」と言われて、最初に頭に浮かんだのが瓦土塀講習会でした。

瓦が乗り、完成間近の瓦土塀

瓦が乗りあと少しで完成する土塀

なぜ数ある講習会の中から、瓦土塀講習会が思い浮かんだのか。最初は自分でもわかりませんでした。
期間が長かったからなのでしょうか。雨が多かったからなのでしょうか。それも確かにあるかもしれませんが、一番の理由はずっと興味がありつつも関わることができなかった工事だったからだと思うのです。会社に勤めていた頃に、たくさんの工事を経験しましたが、それでも土塀の現場に関わることはありませんでした。

柱が立てられた、施工前の瓦土塀の現場

柱が立てられ、これから瓦土塀づくりが始まる

ですから、この講習会が始まった時に恥ずかしくも何の知識もなかったのです。みなさんの後ろについて話を聞き、作業はついていくのが精いっぱい。そんな状態だったのですが、時は待ってくれません。瓦土塀のネタ作りから講習会が始まりました。この時使った粘土は荒木田土と赤土の混合土。後で泥コン屋さんに聞きましたが、粘土によって配合が変わるとのことで、荒木田土に良い配合を採用して講習会は進んでいきました。また、講習会では安全が重視されます。裸足ではなく長靴をはいてのネタ作りとなったのですが、これだけでも私には新鮮な体験。いつか本の写真で見た光景が目の前にあり、私自身はその中で作業をしていました。

ぼさ石の腰積みを終えた瓦土塀の下部

ぼさ石の腰積みが終わった段階

次は日を改めての柱建てから、ぼさ石の腰積みです。記憶では、この石積みの時が最も参加人数が多かったです。改めて、石積み・石仕事に興味がある方が多いことを認識させられました。

次にぼさ石の腰積みの上に粘土と瓦を築いていきます。距離があるため、非常にシビアな作業になる予定でしたが、それを事前に察知していた講師の方が施工方法を考えてくれました。でも、私にとっては初めての経験ですから、正直、かなりシビアでした。みんな必死に積んでいますから、現場にも緊張感が出始めて。ここまでくると講習会ではなく仕事だなという感覚になったのも確かです。そして、この講習会から帰ると、仕事以上に疲れていました。当時は作業量だとばかり思っていましたが、今振り返るとそれは、初めてのことに取り組む緊張感と喜びによるものだったのだと思います。

瓦を挟みながら荒木田土を積み上げた瓦土塀の壁

瓦を挟みながら荒木田土を積んで高さを上げていく

実際に壁が上がって土塀の形が浮かんでくると、やはりワクワクしてきます。物ができあがってくる時の感覚は、いつの時も良いもの。壁の作業は順調に進み、次は屋根の作業になりました。もう時間も経っているので言っても良いと思うのですが、実は粘土の量の関係で高さが少し低くなっています。あれだけ仕事ができる人たちがたくさんいながらも、作るものが大きくなると材料の計算はやはり難しいですね。瓦葺きも、私にとって初めての経験。ですから、何が正解かわからない状態で、周りの方の作業を見ながら進めました。後になり、瓦屋さんからお話を聞いたり、本やYouTubeなどで瓦葺きを覚えようと思えたのはこの時の経験が大きかったと思います。未経験でも、一度、頭で考えて体を通した経験ができると、疑問がたくさん出てきます。職人の仕事は一生勉強ということが身に染みました。そして、それがまた楽しい。

瓦土塀の端の瓦の納まり

土塀の瓦は端の帳尻が難しい

講習会の良いところですが、途中、ひさしの粘土の築き方で誤りがありました。誰しもが同意してくれると思いますが、これは仕事だったらとても嫌なものです。でも、この時は講習会。やり直しすらも経験につながります。結果的に、私の知識をひとつ増やしてくれる工程になりました。幹部の方々は大変だったと思いますが、私はこの時の誤りにとても感謝しています。

そんなこんなで、最後に大直しの仕上げを経て50mの瓦土塀が完成。本当に感慨深い体験になりました。できた土塀を見てとても感動したのですが、実はこの時、私はできてすぐの灰色の瓦土塀をきれいな色とは思っていませんでした。

完成直後の、乾く前の灰色の荒木田土の瓦土塀

乾く前の荒木田土は灰色でした。個人的に好みではなくて(笑)

でも、この考えは数か月後に間違いだったことに気付きます。あらためてこの瓦土塀を見た時、粘土が乾き、荒木田土のきれいな色が浮かんでいました。この色合いと質感。本当に格好良いと感じたのです。これも、実際にやってみなければわからないことですし、会員になるとか継続的に参加するなどをしなければ見ていなかったかもしれません。

乾いて荒木田土の色が出た、完成後の瓦土塀

ご覧くださいこの勇姿。そして素晴らしい色と風合いを

私は土塀に対する知識も技術も0でした。でも、それが講習会のおかげで1になり、物事を考える土台ができたのです。もちろん、職人たるもの、それでも足りないことばかり。日々、勉強です。残念ながら、まだ土塀の仕事を受注できてはおらず、施工したのは自ら参加した緑化フェアの坪庭だけです。技術を得たからといっても、すぐに仕事が来るわけではありません。それでも、日々自らを磨き、信用してもらうようにコツコツと仕事を継続していく中で道は拓けるのだと思います。実際に現場で施工に携わるその時まで、常にアンテナを張り、知識をため続けていきます。いつも、チャンスがやってくるのは、唐突。その時に慌てないように。私の人生の中に「土塀」という知識や技術の土台を築くきっかけになりました。とても、貴重な機会になりました。

この講習会の様子は、ダイジェスト動画にまとめた「瓦土塀講習会、総集編」でご覧いただけます。

文・写真:相澤 武
編集:浦田 浩志

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