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2017年4月14,15,16日 洗い出し研修会

小田原市総世寺にて、左官洗い出し研修会を開催しました。

長田幸司 氏

本堂の前庭から裏の竹林へと続く緩やかな斜面に、道幅約1.5m、延べ35m、およそ60m2の砂利洗い出し舗装で園路を造ります。講師にお招きしたのは湯河原にて株式会社長田左官工業を営む長田幸司 氏。横浜市伊藤博文別邸や小田原市清閑亭など数々の歴史的建造物修復に携わってきた左官のスペシャリストです。私たち庭師も洗い出し工事はやります。それに対して左官さんの手、そして考え方。自分とどこが同じでどこが違うのかを、出会い丁場と違ってじっくり照らし合わせる事が出来る希有な時間となりました。

会場には事前に清水支部長(第八代)により下地コンクリートまで打設してあり、セメントや砂、今回の種石として使う神奈川県産の砂利が準備されています。十数名の参加者に講師の長田氏よりご挨拶と洗い出しについてのレクチャーを頂き、早速仕事に取り掛かります。

まずは種モルタルとノロの練り合わせ。

ノロとはセメントに少量の硅砂や接着剤を加えてペースト状に練ったもので、下地と種を密着させる接着剤の役割を果たします。種モルタルに対して必要量は少ないので、ペール缶にハンドミキサーでよく練り混ぜます。種モルタルは砂利・セメント・硅砂をバケツ等できっちり計量しながらミキサーでよく練ります。この配合具合は人によって違いが出る所ですね、練習を重ねて自分なりの配合を見つけ出すのも楽しみ。今回はセメントをかなり効かせています。配合が変わると仕上げた後の表情が変わってしまうので、複数人で何度も練り足す場合は計量の仕方からよく打ち合わせておきます。

材料が出来上がればいよいよ塗り付けです。

まずはベースの立ち上がり10cmを肩まで塗り上げます。ノロを薄く塗り、乾く前に追っかけで種モルタルを塗り付けていきます。左官仕事でも立ち上がりと肩(出隅)の仕上げは難しく、慣れない者は何度かモルタルを落としつつも慎重に塗り付けていきます。肩は面を取り、柔らかなラインを造ります。

園路表面も同様に、こちらは木鏝やプラ鏝で種石を均等に引っ張り、勾配を意識しながら定木等で平滑に仕上げていきます。全て塗り終わったら、表面の湿りを見て何度か金鏝で伏せ込みます。人造鏝という肉厚の鏝を使う事で種石がよく詰まり、砂利の平らな面が表面に向くようになります。

手分けして伏せ込みまで仕上げたら、硬化の具合を見て洗い始めます。

4月の陽気の中9時から塗り始めた面を11時に洗い始めました。これは人にもよりますが、庭師が普段やっている洗い出しよりやや早いタイミングかもしれません。柔らか目のブラシやハケに水を含ませ、円を描く様にセメントのアマを拭い取っていきます。何度もなんども拭っていくと、徐々に種石が顔を見せてきます。種モルタルの配合は良かったか、しっかりと伏せ込みは出来ていたか或いはやり過ぎてしまっていたか、洗いが足りないとのっぺりとして見た目に悪く、洗い過ぎると脆くなる…この瞬間が正念場、皆一心不乱にハケを回します。

充分に洗い出ししたら表面の水気を取ります。濡れたままにしておくとセメントに含まれているカルシウム成分が溶け出してきて、1日も経てば真っ白になってしまう白華が発生してしまいます。スポンジやハケを使い、様子によっては新聞紙を敷き詰めた上にセメントを薄く伸ばす事でつぶさに水分を吸わせます。

要所で何度も長田氏にアドバイスを頂きながら初日は終了。二日目・三日目は教わった事を思い出しながら自分たちで進めていき、遂に35mに及ぶ洗い出し園路が完成しました。

誰もが知っているのっぺりとしたコンクリートは、一手間掛ける事によって見違えるほど美しい素材として使うことが出来ます。洗い出しならこの様なスロープでも雨で滑ってしまう危険は有りません。今回の研修会を経て、参加者は皆試行錯誤しながら様々な洗い出しを各地に作り出し、日本の庭がより魅力的になっていく事でしょう。

講師を勤めて頂いた長田幸司さん、貴重な時間と技術を与えていただきありがとうございました。

 

ライター : 神奈川県支部員 小谷大輔

 

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