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2019年9月28.29日 金綱重治氏に学ぶ“蹲踞(つくばい)の据付け”研修会

金綱 重治 氏

当会では小田原市郊外の総世寺に於いて、数年がかりで庭園造りのプロジェクトを進めています。今年は日本庭園を語る上で欠かす事が出来ない“蹲踞(つくばい)”と飛石の据え付けを学ぶ為、茶庭・露地の第一人者であり御自身も茶道を嗜んでおられる金綱重治氏(金綱造園事務所)を講師に招き、神奈川県を中心に全国から庭師を集めて研修会を開催しました。

 

迎えた初日の28日、現場に向かうと前年に河西力氏の指導のもと造り上げた延段が佇んでいます。ここから竹林の中緩やかに降っていく空間に露地の世界を造り繋げる事がこの研修会の目的です。延段の平面と竹林の垂直線で構成されたフレームの中にどの様な世界観をつくり上げるのか、庭師達の期待が昂まります。

作庭空間を囲う様に築山を高く盛り付けていきます。茶庭の作庭では内露地と外露地を四目垣等で仕切る事で空間を切り替えますが、その“結界”の役割をこの広大な竹林に於いては土で果たそうという事で、なんとも素敵な遊び心。勿論ただ土を盛るのではなく、踏んだり叩いたりしてしっかりと締め固め、丁寧に表面を仕上げていきます。いずれ苔を乗せる検討も有りますがこれが仕上げと言わんばかりに念入りに。

延段からの降り斜面に飛び石・景石を据え付けていきます。起伏の激しい竹林の中使える重機はバックホウ一台のみ。バックホウには石の運搬を任せ、掘削は全て手掘りで進めていきます。景石、延段からの一番石や踏分け石など大きな役石を極め終え、小さな石を据えていきます。予め運び込んできた石の中から金綱氏が選び出し、位置を割り付け、何度も往復しては石を取り替えたり高さを調節したり。茶庭のプロフェショナルの石選び・石の打ち方・足の運び方、、書籍やネットを眺めるだけでは決して解らない“感覚”を体験出来る貴重な時間です。

                    

蹲踞の“海”になる所に大きな穴を掘り、砕石を敷き詰めたら束ねた排水パイプを突き立て、周りを砕石でしっかりと埋め込んでいきます。現場は道路や建物から離れた林の中なので、公共の排水管に繋がず地下に水を染み込ませる自然排水式です。

蹲踞で使う手水鉢はかなり大振りで瓢箪型の鉢が切られており、金綱氏曰く“面白い”石です。バックホウで大まかな位置まで運び、向きや高さの微調整はチェーンブロックで行います。現代では石の様な重量物吊り上げるのはもっぱらクレーン車やバックホウの仕事であり、三叉にチェーンブロックを仕掛けての仕事を一度も経験した事の無い者も増えてきましたが、重機の入れない現場で重量物を動かすにはこのやり方が今でも一番です。温故知新、こういった経験が出来るのもまた研修会の醍醐味です。

自然石を加工した手水鉢はただ水平に据えれば良いのではありません。何度も水を張り溢れさせて、水の滴り具合を確認しながら据え付けます。手水鉢を極めたら前石・湯桶石・手燭石を、一石ずつ金綱氏に確認して頂きながら据えていきます。立派な手水鉢に合わせた大きめの構成に。石組みの隙間に氐自ら小石を据えつつ解説して下さり、一流の感覚を少しでも学びとろうと皆手を動かしながら真剣に耳を傾けています。役石を全て極め終えたら海の底をモルタルで滑らかに仕上げ、底石を敷き詰めたら蹲踞の完成です。

                    

二日目の半ばには予定していた築山・飛石・蹲踞を全て極め終え、総出で整地していきます。『塵一つ残さない』、庭職にとっては当たり前の事を再確認させて貰う思いで、皆全力で仕上げました。

 

       

この度の研修会もあっという間に終わりました。茶道と茶庭・露地は書籍も多くテレビ番組でも時折見かけられる世界に誇れる日本文化です。その真髄に庭職として近づける、大変貴重な二日間でした。金綱重治氏そして御子息の潤一氏、本当にありがとうございました!

 

ライター : 神奈川県支部員 小谷大輔

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