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『庭での土の可能性を探る』2023/9/23,24

夏の盛りを過ぎて秋の気配がほのかに漂い始めた9月下旬の週末に、日本の伝統的な舗装工法である『三和土』を実習する講習会を開催しました。左官の技能である三和土ですが、園路や犬走りなど作庭にもしばしば用いられる要素であり、私達庭師にもまた縁のある技術です。この度の講習会では、精緻かつ大胆な石積みや独創的な版築を始め、研鑽された技術と感性で多くの名庭を世に出し続けている愛媛県の巨匠、有限会社創造園越智將人 氏を講師に招き、氏がご自身の作庭で用いておられる施工技術を惜しみなく披露し、指導に努めて下さるまたと無い二日間となりました。

神奈川県産の赤土と山砂に、ニガリ、そして貝灰・生石灰・セメントを4パ
ターンの配合で混ぜ、打設して園路を作るのがメインの内容です。現代ではそうそう施工する機会の無い工法であり、本番前に主催側の神奈川県支部役員のみで集まり、園路の基礎工事や三和土の施工手順調査、テストピース試作など下準備に努めたのですが、本番直前の八月にはなんと越智氏が愛媛県からお見えになり、神奈川の土の確認や適切な下準備の指導をして頂きました。

準備万端で迎えた講習会当日、初日の午前中は残念ながら雨。。。神奈川県支部の講習会経験者にとって雨の講習会など慣れたもの、なんなら一雨降らないと落ち着かないくらい(?)ですが、何せ雨厳禁の左官工事であり、流石の越智氏も苦笑いです。一時は準備もままならない程雨足が強くなり、やむなくテントに避難したのですが、越智氏は集まった参加者を前に、三和土施工の勘所や、庭師というに対するご自身の向き合い方、持つべき心構えを、時にユーモアも交えながら懇々と説いて下さいました。

まもなく雨も上がり、ようやく本格的な講習会の開始です。四台のモルタルミキサーを動かし、赤土と砂利をベースとして貝灰・貝灰+セメント・生石灰・ラインチョークと、実験的なものを含めた4種類の配合でネタを撹拌し、ニガリや水で練り込みます。圧巻なのは生石灰で、水と反応して最高温度100℃まで上がりもうもうと湯気が立ち上ります。取り扱い要注意の材料であり、流石の迫力です。

練り上がったネタは次々と施工場所に運び込まれ、この日の為に各々自作した叩き板を持って総がかりで叩き締め、鏝の鉄分を擦り付ける感覚で表面を撫で整えながら園路を作っていきます。その最中、決して一つ所に留まらず、各所を動きながら指示やアドバイスを授けてくれる越智氏。元々モチベーションが高い参加者達も、まさに息の掛かる距離で巨匠の現役振りを目の当たりにして動きが更に変わってきます。毎回思うのですが、このライブ感はどうしても記事や動画では表現しきれない。

園路が落ち着いたら、デモンストレーションとして越智氏が考案した流れの施工法やドイツ壁風の壁面造形、版築工法で作る土玉のオブジェ作成が始まります。水で造形するとも言えるその工法と、あっという間に出来上がった自然のせせらぎさながらの質感に、土塀や洗い出しで作庭素材として土を扱った経験のある者は特に度肝を抜かれました。版築工法で作られる土玉のオブジェは、工事で余った材料を捨てずに活かそうと言う心遣いから生まれたとの事。常に良いもの作りを思考する、越智氏の日々の研鑽が垣間見えました。

この二日間の講習は、技術・知識の習得はさることながら、ここに至るまでの越智氏の道のりを語って頂いた事に大きな収穫を感じました。より良い庭作りを重ねる為の考え方や日々の過ごし方、ひいては庭師としてどう歩んでいくか、、皆で打ち込んだ園路を見返すと、越智氏の柔らかな伊予弁が思い返されます。

越智將人さん、本当にありがとうございました。

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ライター : 神奈川県支部員 小谷大輔

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