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2020年3月14、15日 桂穂垣づくり研修会

小田原市総世寺で桂穂垣づくり研修会を開催しました。

関東・東海・関西方面からも庭師や庭園に携わる技術者が集まり、その数50余名。講師を務めるのは当会の副支部長であり数々の社寺庭園を手掛け伝統的作庭技法に精通する星 宏海氏(有限会社庭匠霧島)。氏には下準備から陣頭指揮して頂き、その場にある物でやるという垣根作りの本質を重視して材料の竹稈と竹穂は全て敷地内の孟宗竹で切り出し、桂離宮の其れと同じ本歌の遣り方で表面を作り、裏面には建仁寺垣をあつらえました。

神奈川支部では昨年から準備を行ってきました。敷地内に生える孟宗竹を間伐し、手分けして数日がかりで竹穂を右穂・左穂に分けていき、それと同時に垣根の柱と躯体を立ち上げ、表の桂穂垣づくりが講習会の目的なので裏面に来る建仁寺垣の立子の搔き付けまでは済ませておきます。垣根は緩やかにカーブする作りで、両面垣なのであまり厚過ぎては野暮ったく、薄過ぎては遮蔽性が保てません。強度や耐性の確保も必要です。それら様々な条件をクリアする為に躯体には工夫を凝らしました。

  

そうして迎えた講習会初日。予報では3月14日は厳しい冷え込みかつ一日中本降りの雨模様との事で、雨と強風に負けぬよう前日に間伐された竹でしっかりとフレームを組み、当日の開始前にブルーシートを結えていきます。雨対策が整ったら竹穂を準備し、いよいよ講習会の始まりです。

総員を約15名づつ三班に分け、各班の中で分担してアンコ詰めと右穂・左穂の耳作りから始めます。アンコは後で目立たない様、かつ穂を横に走らせる時邪魔にならない様上段から差し込み、穂は元から数枝までを捌いて節の左右に耳を作っていきます。アンコを詰め終えたら割り竹の忍びを取り付け、左右の竹穂を市松模様になる様に差し込んでいきます。アンコの量は穂の厚みを考慮している?穂の左右・耳の大きさは大丈夫か、絡げ方は間違ってないか?竹穂を差す間隔は丁度良いか、、桂穂垣に慣れていない庭師たちの悩みは尽きません。それでも、雨に降られて寒くても初対面同士でぎこちなくても、手を動すとともに息が合いはじめ、あちらこちらで意見が取り交わされ、笑い声なんかも聞こえ始めました。またたく間に夕方が迫り、初日は竹穂を残して終了しました。見返してみると、穂を美しく並べる事の難しさ、逆算していけば穂の作り方・揃え方・アンコの詰め具合が分かってきます。

翌15日は冷え込みが残りつつも、ようやく雨が上がりました。昨日に続いて竹穂を差し込む担当と、今度は竹を割って押縁を作る担当に分かれて講習会二日目が始まります。竹割りは天然の竹垣を作るのに欠かせない工程であり、日本庭園に携わる庭師なら何度も経験しているものですが、初対面の同業者に見られながらの仕事は独特の緊張感があった事でしょう。守備良く割れた竹の末口は斜めに削ぎ落として槍仕立てに、これも本歌の仕様です。竹を削ぐのは『銑(セン)』という昔ながらの刃物。初めての道具に庭師たちの目が輝くのはいわば本能でしょう。

 

竹穂の揃えもまだまだ手が掛かります。面によって差し込んだ穂の数が違ったり素直じゃない穂を差してしまった為間隔がバラついているのを直し、面が垂直になる様に忍び竹を調整しつつしっかりと締め付けていきます。

竹が出来上がり面が整ったら、押縁・玉縁を取り付ける工程に入ります。押縁は表の桂穂垣は縦に、裏の建仁寺垣には横に通ります。表裏の二手に分かれ、声を掛け合いながら繰り針で棕櫚縄を交わしていきます。同じ縄で同じ所を結束しているのに、表裏で全く違う景色が出来上がっていくのが両面垣の醍醐味ですね。 

玉縁は垣根の曲がりに合わせ、要所に鋸目を入れて上手く曲げていきます。最終日の終盤に長尺の割り竹を細工するという山場を乗り越え、二日の講習日をフルに使って桂穂垣は完成しました。

違う土地で産まれ育ち各々の道を歩んできた庭師が、一堂に会し最高峰の垣根を作るという奇跡の様な二日間でした。参加して頂いた皆様、ありがとうございました。

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ここ総世寺でのプロジェクトはまだまだ続きます。次の講習会でお会い出来る事を楽しみにしております。

ライター : 神奈川県支部会員 小谷 大輔

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